マーク・ザッカーバーグ「自分の泊まってるホテルは言いたくない」
Facebook CEO マーク・ザッカーバーグが上院議会で公聴会に参加し証言をしました。
それを受けてマーケットではFB株が一時5%高となりました。
次のTechCrunchの記事が最もよく解説していると思いますが、株価上昇につながった要因としては、
- 議員からマーク・ザッカーバーグに対して、痛いところを突くような質問がほとんど出なかった(議員の勉強不足)
- マーク・ザッカーバーグの証言が、態度・内容ともによく訓練されており失点が少なかった
- Facebook と Cambridge Analytica などプラットフォーム上に存在するパートナーとの関係に関して新しいネガティブな情報がなかった
ことが挙げられています。
Zuckerberg’s boring testimony is a big win for Facebook – TechCrunch
これを受けて、マーケットはFacebook等オンラインプラットフォーマーに対する法的規制の懸念を後退させたとの見方が強いです。
ほとんどの場面は退屈ですでに公表された情報の繰り返しにとどまっていたようですが、いくつか白熱した見どころがありました。一つが共和党の保守系上院議員、テッド・クルーズの質問場面でした。
テッド・クルーズは、「Facebookは政治的中立な立場だと考えるのか」とマークに質問し、マーク・ザッカーバーグは「私たちはFacebookをすべての考え方に開かれたパブリックプラットフォームだと考えています」と答えます。テッド・クルーズはGizmodeの記事に触れ、Facebookはリベラルな政治的立場に肩入れしているのではないかと問いただしました。
Full exchange between Senator @tedcruz and Mark Zuckerberg where Senator Ted Cruz questions the Facebook CEO about the censorship of Conservatives on his platform. pic.twitter.com/c6d7jwDbnJ
— The Columbia Bugle 🇺🇸 (@ColumbiaBugle) 2018年4月10日
もうひとつ面白かった場面はこちらです。一人の上院議員が「昨夜泊まったホテルを教えていただくことはできますか」と問うと、マーク・ザッカーバーグは言い淀んで「いいえ(苦笑)」。議場では爆笑で満ちました。「では、もし今週誰かにメッセージを送っていれば、その方の名前を教えてください」「議員、私はおそらくここでそういったことを口にすることはしないでしょう」「それこそ(質問に答えられないこと)が、すべてを物語っているでしょう。(FBの社是である)"世界中の人々をつなげる"という名のもとに、この現代アメリカ社会においてどれだけのプライバシーの権利をあなたは葬り去っているのでしょう」
🛏️ Mark Zuckerberg declined to tell a senator what hotel he slept at or who he had messaged. 📱 pic.twitter.com/wbcxSQhnCQ
— RTÉ News (@rtenews) 2018年4月11日
今晩も下院議会で公聴会が開かれますが大きな進展は見られない可能性が高いです。すると、FBの株価は悪材料出尽くしであがってくるのでしょうか。しばらくは揉みあいが続くでしょう。
なぜなら、Facebook のユーザー、そしてFacebook の広告主がどれだけ離反したかの離反がどの程度なのかまだ明らかになっていないからです。
私はこの問題でFacebookを離れるユーザーはそれほど多くないと見ています。多くの議員も言及していましたが、多くのひとがすでにFacebookに依存していてその利便性を認めているからです。
すると、Facebookの広告主の動きが問題になります。Facebook広告のウリは高精度なターゲティングにあります。特に、ユーザーのデモグラ属性や興味関心を基にしたオーディエンスターゲティングの精度は Google や Twitter などの他の広告プラットフォームから頭一つ抜けているとされています。
Facebook ユーザーの多くは実名登録しており、ユーザーの一意に特定できること、職場・学校歴・生年月日など多くのユーザー固有の属性情報を持っていることが非常に大きな強みとなっています。
Google などは対照的で、基本的にはクッキーをベースとしたターゲティングにとどまり(一意にユーザーを定めることが常にできるわけではない)、検索行動などである程度の推測は可能なもののFacebookが持っているような確定した属性情報を持っておらず、また友人関係などのソーシャルグラフデータを持っていません。一時期、Google が Google+ に挙げられるようなソーシャルプラットフォームに注力した理由はこのあたりが強く関係しています。
そうすると、これまでFacebookが強みとしてきたオーディエンスターゲティングの機能・精度が自主規制や法的規制で後退したときに、より強く悪影響を受けるのはFacebookなのです。EUでは一足先にEU一般データ保護規則(GDPR)と呼ばれるオンラインプラットフォーマーに対する強いデータ管理規制が2018年5月から施工される予定になっておりEUにおける収益のリスクが強く意識されています。
この辺りの事情をどう広告主が受け止めるのか、Facebookが引き続きパワフルな広告出稿メディアであり続けられるのかが、今後のFacebookの成長性に大きく影響してきます。
しかし、これらの問題は非常に複雑で、おそらく半年・1年では済まない可能性が高く、Facebookの株価は冴えない展開がしばらく続くと予想します。ただし、長期的には(数年から~10年)強気です。ここが大きな踏ん張りどころです。
WATCH LIVE: Facebook CEO Mark Zuckerberg testifies before Senate on user data